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クライアントアラート

英国、ESG評価機関に対する初の規制枠組みを導入

February 09, 2026

By Ruth Knox,Arun Srivastavaand Joanna Broadwith

投資家が持続可能な投資により多くの資金を振り向ける中、ESG評価(レーティング)の重要性が著しく高まっているため、英国政府はESG評価機関を初めて金融サービス規制の対象に含めることとしました。2025年12月15日、「2000年金融サービス・市場法(規制対象活動)(ESG評価)令2025」(以下、「本命令」)が成立し、金融行動監視機構(FCA)に対してESG評価セクターを規制する規則を制定する権限が付与されました。これらの規則は2028年6月29日までに施行される予定であり、規制対象となるESG評価機関は、この期日までにFCAの認可を申請し、取得する必要があります。その間、FCAは協議文書(Consultation Paper)25/34「ESG評価:規制に対する提案アプローチ」を通じて、当該セクターの規制に関する方針についてパブリック・コンサルテーション(協議)を行っています。本稿では、新たに規制対象となる活動の範囲と、同セクターの規制に向けたFCAの提案について解説いたします。

本制度は、ESG評価を専門とする機関に直接関わるものですが、ESG関連の分析、スコア、または指標を作成する他の企業にとっても、たとえその成果物が明示的に「評価(レーティング)」としてブランド化・販売されていない場合であっても、広く重要性を持つことになります。同セクターのすべての関係者は、自社のサービスが新設された「ESG評価の提供」という規制対象活動に該当するかどうかを評価する必要があります。

FCAの政策目標は以下の通りです。

  • ESG評価の透明性、信頼性および比較可能性を向上させること。
  • より適切な意思決定を支援し、市場における信頼性を高めること。
  • 比例原則に基づき、サステナブルファイナンスの成長を支援すること。

ESG評価機関に対する規制を拡大しているのは英国だけではありません。例えば、欧州連合(EU)も「ESG評価規則((EU)2024/3005)」を通じて独自の規制枠組みを導入しています。英国とEUの枠組みはともに、証券監督者国際機構(IOSCO)が公表した提言に基づいています。これは、この分野における国際的な相互運用性を確保することを目的としています。

英国ESG評価令

本命令は、FCAの認可要件の対象となるESG評価活動の範囲を定義しています。

正式には、本命令は、「2000年金融サービス・市場法(規制対象活動)令2001(RAO)」を改正し、特定の投資を行う決定に影響を与える可能性が高い場合において、「ESG評価の提供」を規制対象活動として指定するものです。

金融サービス・市場法(FSMA)に基づく他の規制対象活動と同様に、英国でこの活動を行う企業は、適用除外に該当しない限り認可が必要となります。後述のとおり、特定の状況下では英国外の企業も対象となります。

新たな規制対象活動の定義は、投資判断に「影響を与える可能性が高い」評価に適用されるため、潜在的に非常に広範なものとなっています。特定の投資家の状況に基づいて、当該投資家に対して行われる助言や推奨の形式をとっている必要はありません。本命令では、評価が要請されたもの(solicitated)か要請されていないもの(unsolicited)かは問わないことが明確にされています。この潜在的に非常に広範な活動の範囲は、ESG評価の提供者が、その評価が投資判断に影響を与えることを合理的に予期できなかった状況においては制限されます。

「提供」の定義

新たな規制対象活動は、個人または法人がESG評価を「提供」する場合に発生します。本命令案では、この文脈における「提供」とは、評価の「作成」と「利用可能にすること」の双方を意味するとされています。後者には、他者に対して評価を発行することや、ウェブサイトその他のデジタル媒体で評価を公開することが含まれますが、これらに限定されません。

英国外の評価機関

英国外に所在する評価機関は、英国内に所在する者に対してESG評価を提供する場合、新たな規制対象活動の対象となります。これには、評価が英国内の者に直接提供される場合だけでなく、英国外の者に提供され、かつ、評価機関が、当該評価が間接的に英国内の者に「利用可能になると合理的に予期できる」場合も含まれます。

ウェブサイトやその他のデジタル媒体を通じた評価の提供を含む、「提供」という用語の広範な定義により、英国外のウェブサイト上のESG評価へのアクセスを制限する必要があるかという実務上の問題が生じます。

英国には「海外拠点者適用除外(overseas person exclusion)」という制度があり、英国内に恒久的な事業所を持たない者が行う活動については、英国の規制の適用から除外される場合があります。

しかし、今回の枠組みにおいて海外拠点者適用除外は非常に限定的な形で適用されます。海外拠点者が英国内の者に評価を提供し、かつ、その評価に関して誰からも報酬を受け取っていない場合に限り、英国での規制対象活動を行っているとはみなされません。

ESG評価の定義

一部のESG評価はそれと明確に認識できますが、英国の定義は意図的に広く設定されており、企業が従来の意味での「評価」とはみなさないような成果物も対象となり得ます。

本命令に基づき、ESG評価は次のように定義されています:「1つ以上のESG要因に関する評価であって、(a)意見、スコアまたはその両方を組み合わせ形式で提示され、かつ、(b)確立された方法論およびあらかじめ定義された評価カテゴリーに基づくランキング・システムを用いて作成されるもの。」

法律では以下のつを区別しています。

  • ESGスコア:アナリストからの実質的な分析的インプットなしに、あらかじめ確立された統計的またはアルゴリズム的なシステムやモデルを使用してデータから導き出された評価。
  • ESG意見:アナリストからの実質的な分析的インプットを含む評価。

これらがどのようにラベル付けされ、または提示されているかにかかわらず、両方のタイプが対象となります。

また、本命令は「評価カテゴリー」を構成するものの一例として、評価対象の特性を区別する相対的な尺度となるシステム内の変数や区分(アルファベット、数字、記号、色、温度など)を挙げています(なお、これらは限定列挙ではありません)。実務上、これは、赤・黄・緑の指標を使用するような比較的単純なフレームワークであっても、その企業がESG評価機関を自称しているかどうかにかかわらず、対象範囲に含まれる可能性があることを意味します。

特筆すべき点として、EUにおけるESG評価の定義は、ESGと人権の双方の要素を明示的に含んでいます。対照的に、英国の定義には人権に関する明示的な言及はありませんが、そのような考慮事項はESGの「社会(Social)」の要素を包含されるという前提で進められているようです。

ESG評価と投資判断

英国の制度の重要な特徴は、ESG評価の提供が、投資判断に影響を与える可能性が高い場合にのみ規制されるという点です。

関連する投資判断は、RAOに基づく「特定投資(specified investment)」に関するものである必要があります。特定投資には、株式、債券、集団投資スキームの持分、デリバティブ、保険契約、年金の権利などの規制対象金融商品が含まれます(RAO第III部に規定)。

その結果、物理的資産、企業の事業戦略または消費者の購買行動に関する決定に影響を与えるESG評価は、特定投資に関する投資判断にも影響を与える可能性が高くない限り、一般的には対象外となります。

適用除外

本命令には、的を絞ったいくつかの適用除外が含まれています。ESG関連活動に従事する企業にとって、これらの除外の多くは適用範囲が限られたものとなるでしょう。しかし、実務上幅広い関連性を持つ、注目すべき除外規定もいくつか存在します。

主な適用除外は以下の通りです。

  • 規制対象の製品およびサービス:評価が単独の製品またはサービスとして提供されるのではなく、その者がすでに認可を受けている別の規制対象活動または付属サービスを行う過程で提供される場合。
  • グループ内評価:ESG評価が同じ企業グループ内の他のメンバーに提供され、外部で共有されることが想定されていない場合。
  • 私的使用:ESG評価が、契約に基づき取引相手の利益のみを目的として提供され、外部で共有されることが想定されていない場合。
  • 非営利目的の提供:ジャーナリスト、研究者または慈善団体としての活動の過程でESG評価を提供し、かつ、その評価に対して報酬が支払われないか、あるいは随時または単発で提供される場合。
  • 規制または法的要件:その者が服する規制上または法律上の要件を遵守する目的のみで評価が提供される場合。

規制対象活動の過程で提供される場合、ESG評価は個別に規制されることはありませんが、FCAの認可を受けた企業は既存の要件を引き続き遵守する必要があります。これには、FCAのグリーンウォッシュ防止ルールや、該当する場合は、ESGソースブックに規定されているESGの名称およびマーケティングに関するルール、およびサステナブルファイナンス・ラベリング制度が含まれます。また、企業は、利益相反を含め、FCAが導入しているガバナンスやシステムおよび統制に関する要件の多くにすでに服していることになります。

このアプローチは不必要な規制の重複を避けることを意図していますが、一方で、すでに規制を受けている企業と独立系のESG評価機関との間で、競争条件の不均衡を生み出すことになります。FCAは、この仕組みが実務上どのように機能するかを監視し、さらなる調整が必要かどうかを検討するものと思われます。

認可要件

企業が適用除外に依拠できず、本制度の対象範囲に含まれる場合、新制度の主な施行日前にESG評価を提供するためのFCA認可を申請する必要があります。これには、FCAへの正式な申請書の提出が必要となり、企業の法的構造や所有構造、ガバナンス体制、上級経営陣および主要スタッフ、ESG評価活動や管理の性質に関する詳細な情報を添付することになります。その後、FCAは認可を付与するかどうかを決定する前に、申請内容の構造的な評価を実施します。

FCAは現在、認可を受けたESG評価機関に適用される規制要件について協議を行っています。したがって、認可が必要となる見込みの企業は、この協議文書を注意深く確認し、提案されている規則が自社の事業モデル、ガバナンスおよびコンプライアンス体制にどのような影響を与えるかを検討する必要があります。

今後のスケジュールと次のステップ

ESG評価の提供という新たな規制対象活動は、2028年6月29日に施行される予定です。新要件の施行前に申請処理を行えるよう、FCAはこの期日よりも前に新制度に基づく認可申請を受け付ける申請期間を設ける予定です。

本命令では、新たな規制対象活動を行うために必要な許可を申請した者が、FCAによる申請の審査がまだ決定していない場合であっても、主な施行日以降もESG評価の提供を継続できるようにするための経過措置(移行および適用除外措置)が設けられています。この経過措置は、1年後の2029年6月29日に失効します。

したがって、対象となる可能性のある企業様におかれましては、以下の対応をご検討いただくことをお勧めいたします。

  • 自社のESG関連活動が、規制対象となるESG評価を構成するかどうかを評価する。
  • 適用除外に該当するかどうかを検討する。
  • FCAの協議プロセスと並行して、認可取得戦略、ガバナンスの強化およびコンプライアンスの枠組みの策定を開始する。

ESG評価機関に対する規制要件に関するFCAの協議内容については、別途ご案内いたします。

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