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PHast Track: Legal Insights on Environment, Energy and Infrastructure

カリフォルニア州の気候関連報告、 不透明な実施スケジュールにもかかわらず期限迫る

November 06, 2025

By Brian D. Israel,Ruth Knox,

Deborah J. Schmall,

Hunter Nagai,Aaron M. Reuben

and Paige Rinderer

最近発表された通知によると、カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、カリフォルニア州で事業を展開する大企業に特定の環境情報開示を義務付ける2つの法律(SB 253およびSB 261)に関する初期規則案の公表を、2026年第1四半期まで見送る方針を示しました。当初、最終的な実施規則は2025年末までに公表される予定でした。このような遅れが生じているものの、CARBは現行の法令順守期限の変更に関するガイダンスを一切発表しておりません。

SB 253およびSB 261の法定期限は引き続き維持されていることを踏まえ、企業様におかれましては、利用可能なリソースとガイダンスを活用して、法令順守に向けた事前準備を継続していただくことをお勧めいたします。

概要

SB 253は、カリフォルニア州で事業を展開し、全世界の年間売上高が10億米ドルを超える米国企業に対し、スコープ1、2及び3の排出量の開示を義務付けるものです。CARBは、スコープ1および2の報告を2026年6月30日までに、スコープ3の報告を2027年に義務付けることを目標としています。

一方、SB 261は、カリフォルニア州で事業を展開し、全世界の年間売上高が5億米ドルを超える米国企業に対し、気候関連の財務リスク報告書を自社ウェブサイトとCARBデータベースに公開することを義務付けるものです。初回報告書の提出期限は2026年1月1日に設定されており、その後は2年ごとの提出が求められます。

最近の動向

以下は、ここ数カ月におけるSB 253と261に関連する動向のタイムラインです。本法に関する遅延の状況や進行中の法的異議申し立て、ならびにCARBが直近に発表したコンプライアンスに関するガイダンスの状況をまとめております。

10月24日:エクソン社が執行の差し止めを求める訴訟を提起

エクソンモービル社(以下、「エクソン社」)は、カリフォルニア州東部地区連邦地方裁判所に訴訟を提起し、SB 253およびSB 261が米国憲法修正第1条に違反して表現の自由を不当に強要するものであると主に主張しました。また、エクソン社は、対象証券に関連する開示文書に条件を課す州法を明確に排除する「国家証券市場改善法」に基づく優越条項に、これら2つの法律が違反しているとも主張しています。これに基づき、エクソン社はSB 253およびSB 261が修正第1条違反かつ連邦法に抵触することの確認(宣言的判決)を求めるとともに、同社に対する両法の執行を差し止める命令を要請しております。

10月14日:CARBが規制策定のスケジュールをさらに延期

前述のように、CARBはオンライン通知を掲載し、SB 253およびSB 261に関する初期規則案(手数料関連の規定を含む)の提示を2026年第1四半期に予定していることを明らかにし、実施規則の公表をさらに延期しました。CARBは、この遅延の理由について、最近発表した資料に対する大量のパブリックコメントが寄せられたこと、および対象企業の範囲の特定に関連して継続的な意見提出があることを挙げています。規制制定のスケジュールの改訂が、既存のコンプライアンス期限(特にSB 261の初回報告に設定されている2026年1月1日の期限)に影響を与えるかどうかは依然として不透明です。CARBの担当者は、規制が未確定のままである状況下において、1月1日の期限が免除される、あるいは発効しないといった見解を現時点では示しておりません。

10月10日:SB 253におけるスコープ1および2のGHG報告テンプレート案がパブリックコメントに付される

10月10日、CARBは、スコープ1および2の温室効果ガス(GHG)排出量報告のためのテンプレートを公開し、2026年6月に報告されるSB 253の初回開示に含める入力値を提案しました。このテンプレートの公開に併せて、CARBは企業温室効果ガス報告プログラム(Corporate Greenhouse Gas Reporting Program)の下で同テンプレートの使用に関するガイダンスを記載した覚書案も発表しております。これらのテンプレート案と覚書案は、10月27日までパブリックコメントの募集対象となりました。なお、本テンプレートは報告義務の合理化を目的として提供されるものであるため、企業様がSB 253の報告において必ずしもこの形式に従う義務はございません。

9月24日:「カリフォルニア州で事業を行う」企業を特定する暫定的な対象企業リストの公表

9月24日、CARBは「カリフォルニア州で事業を行っている」と見なされ、結果としてSB 253またはSB 261(あるいはその両方)の対象となる可能性が高い4,160社の暫定リストを公表しました。CARBの担当者によると、このリストは、2022年3月までの期間において有効な届出(登録ステータス)を維持している、カリフォルニア州で事業を行う事業体の州務長官マスターリストを利用して作成されたとのことです。リストの作成にあたっては、米国に拠点を置いていること、年間売上高が5億米ドル以上の基準を満たしていること、そしてカリフォルニア州で事業を行っていることという法定要件が用いられています。しかしながら、CARBは、SB 253およびSB 261の適用範囲を決定する上で極めて重要な「カリフォルニア州で事業を行う」という基準についての決定的な解釈や定義を未だに発行しておりません。

この暫定リストは、最終的な実施規則に盛り込まれる可能性のある免除措置を反映したものではないため、どの企業が対象企業として分類されるかについてのCARBの最終的な決定を示すものではございません。また、SB 253またはSB 261(あるいはその両方)に基づく報告義務の対象となるすべての事業体がCARBの発行する「最終」リストに掲載されるかどうかや、報告義務が対象事業体の親会社にどの程度及ぶかについても、依然として不明確です。※1 このような不確実性を踏まえると、暫定リストに掲載されていない企業様であっても、最終的に報告義務の対象となる可能性がございます。

9月11日:法的異議申し立てが続く中、カリフォルニア州の連邦裁判所が実施の差し止めを求める動議を棄却

9月11日、カリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所の裁判官は、米国商工会議所を含む業界団体や企業団体の連合体が提起した、SB 253およびSB 261の差し止めを求める動議(現在進行中の法的異議申し立ての一環)について、事前の棄却判断を再考することを拒否しました。この決定は、8月13日に下された仮処分申請の企画を再確認するものであり、原告側は「SBS 253およびSB 261に対する米国憲法修正第1条に基づく文面上の異議申し立てのいずれについても、本案訴訟で勝訴する見込みを示していない」とし、最初の棄却以降、2つの法律の差し止め動議の再考を正当化するような重大な状況の変化は見られないと述べています

現在、当該連合体は連邦地方裁判所による仮処分の棄却を不服として、第9巡回区控訴裁判所に控訴しております。なお、口頭弁論の日程はまだ設定されておりません。

9月2日:SB 261のガイダンス草案にて、コンプライアンスの選択肢と最小要件の概要が提示される

CARBは9月2日、SB 261に関するガイダンス草案を公表しました。これには、報告主体向けの全体的なチェックリストとして、組織の気候関連のガバナンス、戦略、リスク管理および指標と目標に関する最小限の開示要件が含まれております。

同ガイダンスによれば、報告主体は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言、または国際財務報告基準(IFRS) S2のいずれかの第三者報告フレームワーク、あるいは規制当局の監督下にある取引所や政府機関による既存のフレームワークに従って報告書を作成することが選択可能です。

執行の裁量について:なお、CARBは2024年12月の執行通知において、企業が法令順守に向けて誠実な努力を示していることを条件に、2026年に期限を迎える初回報告書に関して「執行の裁量」を行使し、「不完全な報告に対しては執行措置を講じない」と明記している点は注目に値します。

今後のご準備に向けた推奨ステップ

規則制定の遅れや迫り来る法的な異議申し立てが存在するものの、CARBはSB 253およびSB 261に基づく初回報告の期限を延長するかどうかについては沈黙を保っております。したがって、企業様におかれましては、実施規制が存在しない状況であっても、これらの期限が維持されるという前提でご対応を進めていただくことをお勧めいたします。利用可能なリソースやガイダンスを活用し、コンプライアンスに向けた以下の準備措置を講じていただくことが可能です。

  1. 適用可能性の評価:上述の通り、SB 253およびSB 261に基づく規制は、全世界の年間売上高がそれぞれ10億米ドルおよび5億米ドルを超える、カリフォルニア州で事業を行う米国企業にのみ適用されます。CARBが公表した対象企業の初期リストは、CARBがどのような企業を「カリフォルニア州で事業を行っている」と見なす可能性が高いかを判断するための参考となります。自社にSB 253とSB 261が適用されるか不明な企業様におかれましては、このリストを活用して適用可能性の度合いを評価していただくことをお勧めします
  2. 予備的アクションプランの策定:CARBは両法律に関する予備的なガイダンスを公表しております。SB 253のガイダンス覚書案とSB 261の報告テンプレート案の公開に加え、CARBの担当者は5月および8月にオンラインでの公開ワークショップを開催しました(これらの録画およびプレゼンテーション資料はCARBのウェブサイトで入手可能です)。企業様におかれましては、これらのガイダンス資料に概説されている最小限の開示要件を満たすための基本となるアクションプランを策定し、それらの要件を満たすために関連するコストを評価していただくことが推奨されます。また、他のTCFD開示制度(対象企業が他の法域において規制対象となっている場合)を遵守する目的で使用された戦略的資料も、出発点として有効に活用いただけます。
  3. データの収集およびSB 261初回報告書の作成:2026年に設定された報告期限に照らし、SB 253またはSB 261(あるいはその両方)の対象となる可能性がある企業様は、速やかにデータ収集を開始していただく必要がございます。これには、SB 253の暫定的な報告テンプレートに記載されているスコープ1および2のデータポイント、SB 261の開示に向けた指標および目標データが含まれます。SB 261の初回報告書の提出期限まで3か月を切っているため、報告対象の企業様におかれましては、ガバナンス、戦略、リスク管理に関する開示文書の作成にも着手していただくことを強くお勧めいたします。