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クライアントアラート

米国司法省・米国財務省・米国商務省の三者によるJoint Compliance Noteと 強化された協力体制によって増大する取締リスク

August 04, 2023

By Tom Best,Nathaniel B. Edmonds,Scott M. Flicker,Lindsey Ware Dieselman,& Thomas Jordan

2023年7月26日、米国司法省、米国財務省及び米国商務省は、米国の制裁規制、輸出管理法及びその他の国家安全保障に関連する法律に関して、違反可能性が存在するときに適用される自主的自己開示方針(Voluntary Self-Disclosure Policies)と関連してJoint Compliance Note(「JCN」)を発表した。JCNは、米国の各省庁の自主的自己開示方針に関するアップデートと新しいガイダンスに言及をしたものである。その上で、JCNは米国の連邦法を執行する機関の最近の取組みの一環である、政府機関間また他国との協調及び情報共有に向けた努力を紹介するものであるとともに、その努力の結果、国際的に事業を展開する企業がリスクに直面する危険性が高まっていることを強調するものとなっている。

米国の各省庁によるアップデートは、各省庁の既存の自主的自己開示方針に変更を加えるものではない。もっとも、JCNは米国の執行機関が強調する協調的なアプローチに主眼を置くことで、経済制裁、輸出管理及びその他の国家安全関連のルールや規制の執行体制が今後更に強化される方針を示すものとなっている。3つ全ての執行当局との関係で、米国の制裁規制、輸出管理法及びその他の国家安全保障に関連する法律への違反の可能性を企業が自主的に自己開示することで、その自己開示によるメリットとインセンティブを享受できるかは、一般的に、1)開示が迅速かつ適時であったか、2)開示が包括的であり、その時点で判明しているすべての関連情報が含まれていたか、3)企業が捜査に全面的に協力したか、4)行為に関連して加重又は軽減事由があったか、5)企業が違反を速やかに是正したか、にかかっている。適用されうる自主的自己開示方針に従って、自主的に違反の可能性を開示することによって、企業は課徴金の軽減、より寛大な結果での刑事事件の終結及びより少ない罰金での解決といった多大な利益を得ることができる。自主的自己開示を検討する際の考慮事項は目新しいものではないものの、新たに示された執行当局間の協調的な執行アプローチは、企業が制裁と輸出管理のリスク評価を一体的に慎重に分析すべきことを示すものであるとともに、捜査対応の際は、いかなる捜査であったとしてもその捜査に関連する全ての関連当局(米国司法省、米国商務省及び米国財務省)の関心事項に的確に応答することが必要となってくる点を示唆するものとなっている。

1.米国司法省の国家安全保障局の自主的自己開示方針のアップデートについて

米国司法省(Department of Justice)の国家安全保障局(National Security Division)は、2023年3月1日、米国の制裁規制、輸出管理及び国家安全保障に関連する法律に違反している可能性がある場合に行われる自主的開示と関連して、アップデートされた自主的自己開示方針を発表した。アップデートされた方針によると、企業が合理的かつ迅速に違反可能性を自主的に開示し、捜査に全面的に協力し、適時かつ適切に違反を是正する場合には、国家安全保障局は原則として、企業に有罪答弁を求めず、企業は不起訴合意の恩恵を受けることができる推定が働くことが明らかとなった。また、その場合、企業は罰金の支払いを免れることとなる。もっとも、このアップデートされたガイダンスによると、企業が違反行為によって、また違反行為と関連して不法に獲得した利得を保持することは認められない。したがって、企業は、不起訴合意で進めたい場合、不当利得の吐き出しや没収・追徴に応じなければならないことになる。

これは2023年1月17日に改訂されたばかりの米国司法省の刑事局の企業取締方針(Corporate Enforcement Policy)と類似しており、企業の刑事違反の取締りを担当する米国司法省内の異なる部署間での全体的な方針の一致を示唆している。国家安全保障局による不起訴合意とは異なり、刑事局の方針によると、企業が自発的な自己開示を行うことによって享受できる利益は、当該捜査の終結(declination)の推定に留まるとされている。もっとも、重大又は広範な犯罪行為への該当、上層部の関与、度重なる違反、殊更機密性の高い技術や品目の関与、違反がエンドユーザーに一層の懸念を与えるものである、また不正行為に起因して多額の利益が発生したなど、特定の加重事由が存在する場合、捜査の終結や不起訴合意の推定は働かないとされている。このような制限は、違反行為が国家安全保障に対する重大な脅威に関わる行為であるか否かなど、国家安全保障の文脈に特有の事由に限定されてはいるものの、国家安全保障局が示す制限の指針は企業取締方針と一致しており、自己開示をするか否か企業が戦略を練る際に考慮すべき重要な要素である。

国家安全保障局の自主的自己開示方針のアップデートは、他にも企業取締方針の内容を反映するものとなっており、その多くは企業取締方針を一字一句反映するものとなっている。具体的には、自主的自己開示方針のアップデートの一環として、国家安全保障局は自主的に違反可能性を自己開示することのメリットを企業が享受ために充足する必要があるいくつかの要素を明確化した。国家安全保障局のアップデートされた自主的自己開示方針によると、捜査への「全面的な協力」とは、関連する文書の適時の保全・収集、会社の内部調査手順(証人への事情聴取を含む)の矛盾の解消及び国家安全保障局による追加捜査対象となりうる分野の適時の特定が含まれることが明らかとなった。国家安全保障局のアップデートされた自主的自己開示方針における捜査への「全面的な協力」の定義は企業取締方針における同文言の定義と一致する。違反の是正に関しても、国家安全保障局のアップデートされた自主的自己開示方針は企業取締方針と方向性が一致するようになった。すなわち、国家安全保障局の自主的自己開示方針がアップデートされたことにより、国家安全保障局は、違反の是正を検討する際、対象企業が、刑事関連の不祥事に関与した従業員、又はその不祥事と関連して監督権限を有していた従業員に対して適切な懲戒処分を実施したかどうかを考慮しなければならないこととなった。国家安全保障局の自主的自己開示方針と企業取締方針の方向性が調和されたことによって、複数の米国司法省の部署や複数のルールや方針にまたがるコンプライアンス問題にしばしば遭遇する企業にとっては、ガイダンスがより明確で一貫性のあるものとなったといえる。

これらの自主的自己開示のガイドラインのアップデートに加え、国家安全保障に関連する法律と関連して企業に対するコンプライアンス捜査・取締りを強化するという米国司法省の公約をより一層明らかにするものとして、国家安全保障局は最近、企業執行担当のチーフ・カウンセルを採用するとともに、新たに25人の検察官を増員した。[1] FCPAユニットでは、FCPAの執行に特化した検察官は約30名ほどしかいないことを考慮すると、国家安全保障局内での人員の増員は、米国司法省が国家安全保障問題を取り締まるのに新たな資源を投入し、このような問題を継続的に取締りの優先対象とするとのLisa Monaco司法副長官の発言の正当性を高めるものであるといえる。[2]

2.米国商務省産業安全保障局の自主的自己開示ガイダンスのアップデート

また2023年7月26日に、ある学会(Society for International Affairs)において、米国商務省のMatthew Axelrod輸出取締担当次官補は、米国財務省外国資産管理局との間で「我々の緊密な連携とパートナーシップを正式なものとする」協定が調印されたと発言するとともに、「私たちは我々の取締チームが一層緊密に連携をとることを確約する」、「今後は、両機関に自主的に開示された事項を含め、共通の捜査対象に関する捜査を共同で解決することを目指す。結果として、今後はより協調的な取締りが行われることが期待できる」と発言した。[3] 2023年5月にAxelord輸出取締担当次官補は、米国商務省と米国財務省が結成した共同の Disruptive Technology Strike Forceが2023年2月から「成果を上げ始めている」とも発言していた。[4]

JCNは米国商務省産業安全保障局(Department of Commerce’s Bureau of Industry and Security)の自主的自己開示方針に一切変更を加えるものとはなっていない。もっとも、JCNは、軽微な違反を迅速に解決し、より重大な違反と関連する取締事項を集中して取り締まることを意図している米国商務省産業安全保障局の運用体制及び資源配分に関連する内部の決定を強調するものとなっている。JCNは、自主的自己開示は適時かつ包括的で、捜査への全面的な協力が必要となることに言及するとともに、2022年6月に米国商務省産業安全保障局が自主的自己開示を処理するために新たに導入した「Dual-Track」システムも紹介している。このシステムによると、軽微な違反や技術的な違反に対する自主的自己開示は60日以内に解決する一方、より重大な潜在的違反はより詳細な審査を受けることになる。また、JCNは米国商務省産業安全保障局が発表した2023年4月18日付のMemorandumにも言及をしている。このMemorandumによって、1) 近い時期に発生した複数の軽微な違反又は技術的な違反は、1つの自主的自己開示で開示を行うことが可能であることが示唆され、2) 企業が意図的に自主的自己開示をしない決定をした際、米国商務省産業安全保障局がそのガイドラインをどのように運用するかが明確化されたところ、JCNでは改めてこれらの内容が強調されている。

この2023年4月付のMemorandumでは、重大な違反の可能性がある際に企業がその違反を自主的に自己開示しない決定をした場合、その決定を加重事由として考慮すると述べられている。この方針は米国司法省の企業取締方針とは異なるものであり、例えば、米国司法省の企業取締方針においては、開示を怠ったこと自体が加重事由になるとは特に述べられておらず、代わりに、自主的に違反を開示しなかった企業が「後に捜査に全面的に協力をし、適時・適切にその違反を是正した場合、......罰則の軽減を受けるか、刑事局が罰則の軽減を提案する」と述べられている。[5]

またこの4月付のMemorandumでは、具体的にどのようにこれが機能するかは明確にはなっていないものの、明らかな違反に関する情報を米国商務省産業安全保障局に提供した第三者は、自身が将来、違反を犯した際、たとえその違反が米国商務省産業安全保障局に通報した違反内容と関係がないものであったとしても、その将来の違反について緩和的措置を受けることができるとも規定されている。この方針もまた米国司法省や米国財務省外国資産管理局とは異なるものであり、米国司法省や米国財務省外国資産管理局は他の企業の違反を通報したことを、将来、通報した企業が他に違反を犯した際、緩和事由として検討するとは明言していない。

JCNは、米国商務省産業安全保障局が2023年4月付のMemorandumで示された方針の概要を改めて説明するとともに、開示の可否を決定するきっかけとなる証拠の特定を回避するために、潜在的な違反に関する内部調査を実施しないことを選択した企業(すなわち、潜在的な違反行為に対して「盲目」であり続けようとする企業)については、そのような行為が企業のコンプライアンス・プログラムの存在、性質、適切性に関する米国商務省産業安全保障局の評価に悪影響を及ぼす可能性があり、米国商務省産業安全保障局はそのような状況をマイナス要因とみなすことができると説明している。

3.米国財務省外国資産管理局による自主的自己開示のガイダンス

自主的自己開示に対する国家安全保障局及び米国商務省産業安全保障局の方針と同様、米国財務省外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control)は以前、ガイドライン(Appendix A to 31 C.F.R. Part 501 参照)を発表しており、米国財務省外国資産管理局は「制裁の対象決定、監視、執行のための(その)技術的作業において新たな道を切り開こうとしており」、企業が米国の制裁規制に対する明白な違反を自主的に自己開示することに明確なインセンティブを与えている。[6]

そしてJCNは、米国財務省外国資産管理局の取締ガイドラインについても何ら新たなアップデートを加えるものとはなっていない。もっとも、JCNは米国財務省外国資産管理局が米国の制裁規制違反の可能性を評価する際に、自主的自己開示やその他の緩和事由(又は加重事由)をどのように考慮するかについて、そのような事由が課徴金に及ぼす影響も含めて、改めて説明している。例えば、JCNに関連して、米国財務省外国資産管理局のAndrea Gacki局長は、米国財務省外国資産管理局の自主的自己開示方針を利用する企業は、「自らを助け、金融システムの保護にも役立つ」と説明している。[7] 更に、JCNは、明白な違反に対する米国財務省外国資産管理局の総合的な状況評価(totality-of-the-circumstances assessment)において、自主的自己開示が極めて重要な減軽事由であり、要件を充たした自主的自己開示は提示された課徴金を50%に減軽しうる効果を有すると強調している。その上で、JCNは、自主的自己開示が要件を充たすものであるためには、開示が米国財務省外国資産管理局又は他の政府機関が明白な違反を発見する前、又は発見と同時になされる必要があり、米国財務省外国資産管理局は、他の政府機関に対する自主的自己開示が米国財務省外国資産管理局に対する自主的自己開示の要件を充足するものとなるかどうかはケースバイケースで検討するということを注意喚起している。

4.米国財務省金融犯罪取締ネットワークの役割

JCNは加えて、金融犯罪取締ネットワーク(「FinCEN」)の内部告発プログラムの役割の拡大にも注目している。この内部告発プログラムは、民事上又は刑事上の違反捜査にうまく結びついた内部告発を行った内部告発者に対して報奨金を支給する内容となっている。FinCENの内部告発プログラムは、当初は銀行機密保護法(Bank Secrecy Act)違反の通報のみを対象としていたが、ロシアのウクライナ侵攻後、米国議会はプログラムを拡大し、米国の制裁規制や輸出管理法違反の可能性の通報を行った内部告発者の保護や、そのような者に対しても金銭的報酬を提供するようになった。

内部告発プログラムの適用対象が拡大されたことにより、潜在的な内部告発者は米国の制裁規制や輸出管理法違反をFinCENに通報することができることとなった。告発内容によっては、その告発が米国財務省外国資産管理局、米国商務省産業安全保障局、米国司法省のいずれか又はこれらすべての機関に対して共有されることとなっており、米国当局間の協調的なアプローチをより一層示すプログラムとなっていることが見て取れる。JCNは、場合によって、「FinCENは、告発した情報が『関連する行為』の取締りに結び付いた場合には、報奨金を支払うこともあり、これはすなわち輸出管理改革法(Export Control Reform Act)などが定める権限に基づいて取締りが行われた場合、当局は報奨金を支払う可能性があることを意味している」という点に言及している。[8] これにより、制裁規制や輸出管理法違反と思われる事象を通報する内部告発者のインセンティブが更に高まるものと想定される。FinCENの制裁及び輸出管理の取締りにおける役割は、今後ますます大きくなる可能性が高く、特に、米国財務省外国資産管理局のAndrea Gacki局長が2023年7月13日付でFinCENの局長に任命されたことは注目に値する。[9]

5.一体的な制裁・輸出管理リスクの評価

2022年2月のロシアのウクライナ侵攻以来、ロシアに対する制裁と輸出規制は急速に拡大しており[10]、この流れで米国の同盟国との間での連携強化も見られるところである。[11] また、中国への先端技術の輸出に対する規制も強化されているところである。[12] これらの社会情勢の流れを受けて、企業は未だかつてないほど米国当局による取締りのリスクの危険にさらされている。残念なことに、多くの企業の制裁及び輸出管理コンプライアンス・プログラムは、米国の政策や手続きがより限定された製品・品目又は輸出が完全に禁止されている一定の国に焦点を当てて作成された時代のものをベースに設計されたものであり、今の社会情勢を踏まえて設計されたものではない。企業は、小さな違反が組織的なものとなったり、また内部告発者が企業の管理体制の不備を自身の収益に結びつけようとする前に、こうした新たなリスクを理解し、対処するよう努めるべきである。

この困難な新しい環境に対応できるよう自社の内部統制を強化するために、企業は一体的な制裁と輸出管理のリスク評価を実施すべきであり、これまで多くの企業が行ってきた限定的なアプローチではなく、より網羅的なアプローチを確保するために複数の規制当局による規制体制を同時に分析する必要がある。このような総合的な制裁と輸出管理のリスク評価には、以下のものが含まれる。

  • リスクの特定:米国のさまざまな当局間、及び英国とEUの規制など米国とその他の法体系との間における規制の違いや重複する規制体制から生じるリスクを含めて、リスクの特定をまずはすることが望ましい。

  • 特定したリスクを分析し、順位付け:リスクを特定した後、そのリスクを分析し、順位付けを行うことになるところ、その際、a)輸出、資金の流れ及び取引関係の一部のみが制限されている国とビジネスをすることから生じるリスク、及びb)ビジネスをすることが許可された受取人又は場所からそのような許可がないものへ輸出製品等が流れてしまうリスクを考慮することが望ましい。

  • リスクを緩和する措置の特定及びその優先順位付け:リスクを特定し、分析をした後は、そのリスクを緩和する措置を検討することになるところ、これらの緩和措置の中には、特定したリスクとその順位付けに基づく監視強化体制の構築、契約条件の強化、製品や技術を受領した相手方に対し、それらを更に第三者に移転することを禁止したり、あるいは制裁対象の第三者と関わることを一切禁止したりといった措置を検討することとなる。

  • 残留するリスク:リスクを緩和する措置を講じたとしても、リスクを完全に排除することはできないため、潜在的な違反が適時に特定され報告されるよう、過去の取引及び取引相手の監査に重点を置いたリスク分析を継続して行うことが望ましい。

現在の規制当局による取締り環境がもたらすリスクを理解することによって、企業はどのように対応するのが最善かを適切に分析することができ、最終的には、潜在的な違反を自主的に開示するという決断に迫られた際、開示するか否かの決断により企業がどのような影響を被ることになるかを理解することにもつながる。

結語

全体として、JCNは、米国政府の方針である取締当局間で互いに捜査協力をしたり、情報共有したりする姿勢に焦点を当てるものとなっている。注目すべきは、今年5月、米国商務省産業安全保障局のMatthew Axelord氏が、中国とロシアへの違法な輸出で起訴された一連の事案は「始まりに過ぎない」と発言をし、Disruptive Technology Strike Forceがこのような取締りを継続することは「今後も期待できる」と述べたことだ。[13] 米国、英国、EUなどの多国間における協力体制の強化の一環としての米国政府機関間の協力体制の強化は今後も発展・強化される可能性が高い。

JCNは、企業がどのような軽減措置を受けるべきかを決定する際に、各機関が独自の方針と考慮すべき要素を持っているという事実を注意喚起する一方で、共通して考慮される要素としては、自己開示の内容の包括性、捜査への協力の度合い、根幹となる行為の重大性が挙げられることを示している。更に、米国司法省と米国商務省産業安全保障局はともに、自主的自己開示の適時性を重要な要素とみなしているのに対し、米国財務省外国資産管理局は適時開示について特段の要件を設けていないが、そもそも自己開示が自主的自己開示としてみなされるためには、米国財務省外国資産管理局又は他の機関が問題となっている行為を発見する前に企業は違反可能性を開示しなければならず、米国財務省外国資産管理局は企業が米国財務省外国資産管理局以外の機関に行った自主的自己開示に対し、自動的に軽減措置を与えることはないとしている点には留意が必要である。

重要なことは、JCNが強調した政府機関間の協力であり、企業の内部調査の段階で違反可能性を自主的に自己開示するかを決定するための審議においては、開示した情報がすべての政府機関間で共有される可能性が非常に高いことを考慮したうえで、違反可能性を自主的に自己開示するかを決定すべきであるということがいえる。各機関は根幹となる行為に異なる側面から焦点を当てて分析をする可能性が高いため、企業は最初に自主的自己開示した事実について追加の照会を受ける可能性があるとともに、これらの追加の事情聴取によって事実上、他の潜在的な違反が発覚する可能性があることについても企業は留意すべきである。そのため、輸出管理又は制裁違反に関連する捜査を行う企業は、一つの規制当局の規制体制のみとの関係で違反を分析するのではなく、規制当局を跨いで全体的に違反を分析しなければならない。

米国の取締当局は、取締体制が近いうちに変更される可能性を示唆している。企業は、この規制当局の示唆に耳を傾け、自社の輸出管理プログラムの強度を速やかに評価すべきである。この急速に変化する社会情勢の中ではほぼ避けられないことではあるが、仮に問題を発見した場合、企業はその違反を開示するかどうかという難しい決断に迫られる。もっとも、開示するか否かの判断は、その行為に関心を持つ可能性のあるすべての取締当局との関係で、開示の影響を徹底的に調査した後に下すべきである。

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[1] U.S. Department of Justice, “Deputy Attorney General Lisa Monaco Delivers Remarks at American Bar Association National Institute on White Collar Crime,” (March 2, 2023), available at https://www.justice.gov/opa/speech/deputy-attorney-general-lisa-monaco-delivers-remarks-american-bar-association-national.

[2] Indeed, Ms. Monaco has been quoted as stating that “sanctions are the new FCPA.” U.S. Department of Justice, “Deputy Attorney General Lisa O. Monaco Delivers Keynote Remarks at 2022 GIT Live: Women in Investigations,” (June 16, 2022), available at https://www.justice.gov/opa/speech/deputy-attorney-general-lisa-o-monaco-delivers-keynote-remarks-2022-gir-live-women.

[3] BIS, “Remarks as Prepared for Delivery by Assistant Secretary for Export Enforcement Matthew S. Axelrod to the Society for International Affairs Summer Back to Basics Conference” (July 26, 2023), available at https://www.bis.doc.gov/index.php/documents/about-bis/newsroom/3304-axelrod-sia-keynote-final/file.

[4] BIS, “Assistant Secretary for Export Enforcement Matthew S. Axelrod Delivers Remarks on the Disruptive Technology Strike Force,” (May 16, 2023), available at https://www.bis.doc.gov/index.php/documents/about-bis/newsroom/press-releases/3271-2022-05-16-as-axelrod-disruptive-tech-strike-force-announcement-final-1/file.

[5] U.S. Department of Justice, 9-47.120 – Criminal Division Corporate Enforcement and Voluntary Self-Disclosure Policy, (Jan. 2023), § 3, available at https://www.justice.gov/criminal-fraud/file/1562831/download.

[6] U.S. Dep’t of the Treasury, “Remarks by Secretary of the Treasury Janet L. Yellen on Way Forward for the Global Economy” (Apr. 13, 2022), available at https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy0714.

[7] U.S. Dep’t of Justice, “Departments of Justice, Commerce and Treasury Issue Joint Compliance Note on Voluntary Self-Disclosure of Potential Violations” (July 26, 2023), available at https://www.justice.gov/opa/pr/departments-justice-commerce-and-treasury-issue-joint-compliance-note-voluntary-self.

[8] The FinCEN whistleblower program is relatively new, having been set in place in 2021; in remarks made in March 2022, Himamauli Das, then acting director of FinCEN, stated that the program was in its early stages and that “To be eligible for an award, the whistleblower’s information must lead to a successful enforcement action by FinCEN or DOJ.” FinCEN, “Prepared Remarks of FinCEN Acting Director Himamauli Das During NYU Law’s Program on Corporate Compliance and Enforcement,” (Mar. 25, 2022) available at https://www.fincen.gov/news/speeches/prepared-remarks-fincen-acting-director-himamauli-das-during-nyu-laws-program.

[9] Dylan Tokar, “Treasury’s Sanctions Chief Is Appointed Director of Financial Crimes Bureau,” Wall Street Journal (July 13, 2023), available at https://www.wsj.com/articles/treasurys-sanctions-chief-is-appointed-director-of-financial-crimes-bureau-9c75e6dc.

[10] For example, since the invasion, OFAC has designated over 2,500 Russia-related entities as SDNs and has sanctioned more than 75% of the entities in operation in Russia’s banking sector; FinCEN has issued four alerts, an advisory, and an analysis of trends and red flags associated with Russian illicit finance and corruption; the G7 and EU have adopted price caps on sales of crude oil originating in Russia (see, e.g., Dep’t of the Treasury, “FACT SHEET: Disrupting and Degrading—One Year of U.S. Sanctions on Russia and Its Enablers,” (Feb. 24, 2023) available at https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy1298#:~:text=Fast%20Stats,115%20vessels%2C%20and%2019%20aircraft.); and BIS has implemented increased export controls targeting the defense, aerospace and marine, and oil refining sectors (see, e.g., “Departments of Justice, Commerce and Treasury Issue Joint Compliance Note on Russia-Related Sanctions Evasion and Export Controls,” (Mar. 2, 2023) available at https://www.justice.gov/opa/pr/departments-justice-commerce-and-treasury-issue-joint-compliance-note-russia-related#:~:text=Since%20Feb.,its%20illegal%20war%20in%20Ukraine.), among other measures: Supplements No. 5 and 6 to 15 C.F.R. § 746 restrict the export to Russia or Belarus of, respectively, luxury goods that may facilitate money laundering and items useful to Russian chemical and biological weapons production capabilities).

[11] In addition to taking action to designate the same parties on their sanctions lists, the U.S., EU, and other allies are coordinating on additional measures, such as removing some Russian banks from the international SWIFT payments system. RFE/RL, “EU Cuts Seven Russian Banks from SWIFT, Bans RT and Sputnik,” (Mar. 2, 2022) available at https://www.rferl.org/a/eu-swift-russian-banks/31732511.html. See also Dep’t of the Treasury, “Targeting Key Sectors, Evasion Efforts, and Military Supplies, Treasury Expands and Intensifies Sanctions Against Russia,” (Feb. 24, 2023) available at https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy1296 (noting sanctions coordination between U.S. agencies “in coordination with allies and G7 partners[.]”) and Dep’t of the Treasury, “U.S. and EU Sanctions Teams Enhance Bilateral Partnership,” (May 16, 2023) available at https://home.treasury.gov/news/press-releases/jy1485 (describing an April 2023 multilateral meeting in Brussels between OFAC, the European External Action Service, and the European Commission Directorate-General for Financial Stability, Financial Services and Capital Markets Union to strengthen working relationships).

[12] Restrictions on exports to China of advanced chips and semiconductors were put in place last year, BIS, “Commerce Implements New Export Controls on Advanced Computing and Semiconductor Manufacturing Items to the People’s Republic of China,” (Oct. 7, 2022) available at https://www.bis.doc.gov/index.php/documents/about-bis/newsroom/press-releases/3158-2022-10-07-bis-press-release-advanced-computing-and-semiconductor-manufacturing-controls-final/file (noting two new export control rules restricting China’s “ability to obtain advanced computing chips, develop and maintain supercomputers, and manufacture advanced semiconductors.”), and recent reports indicate that broader restrictions are being developed, see, e.g., Evelyn Cheng and Clement Tan, “Senate passes toned-down bill to increase oversight of investments in Chinese technology,” (July 26, 2023) available at https://www.cnbc.com/2023/07/26/senate-passes-bill-to-increase-oversight-of-investments-in-chinese-technology.html (noting that the law, if passed, “would require U.S. firms to notify the Treasury when investing in advanced Chinese technology on national security concerns.”) and Andrew Duehren, U.S. Prepares New Rules on Investment in China,” Wall Street Journal (Mar. 3, 2023) available at https://www.wsj.com/articles/u-s-prepares-new-rules-on-investment-in-technology-abroad-a451e035 (noting that the Treasury and Commerce departments “were considering a new regulatory system to address U.S. investment in advanced technologies abroad that could pose national security risks” and that could “prohibit some investments while also potentially collecting information” about others and could “cover private-equity and venture-capital investments in advanced semiconductors, quantum computing and some forms of artificial intelligence.”).

[13] Ian Cohen, “Recent Export Control Enforcement Actions 'Just the Beginning,' BIS Official Says” (18 May 2023), Export Compliance Daily, available at https://exportcompliancedaily.com/news/2023/05/18/recent-export-control-enforcement-actions-just-the-beginning-bis-official-says-2305170033.

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