クライアントアラート
MiCAに基づく暗号資産ホワイトペーパー、 要件遵守か、さもなくば上場廃止
October 22, 2025
By Arun Srivastava,Eric C. Sibbittand Ruth Knox
EUの暗号資産市場規制(MiCA: Markets in Crypto-Assets)の下、自社のデジタル資産を引き続き欧州の取引所に上場させることを希望するデジタル資産発行者は、今後、必須要件を満たすホワイトペーパーを提出することが求められます。EUの包括的な暗号資産規制の枠組みは、EU域内にとどまらず、米国やその他のEU域外の企業にとっても状況を一変させるものとなっています。EU市場に影響を及ぼす暗号資産関連の活動、特にEU域内におけるトークンの提供や取引は、現在、EUの規制管轄下に置かれています。また、MiCAは、欧州の暗号資産市場に参加する取引所、ブローカー、カストディアンおよびその他の仲介業者に対するライセンス制度も確立しています。
主な留意点
MiCA準拠のホワイトペーパーは、従来のデジタル資産ホワイトペーパーとは異なります。 EUは、ESGやサステナビリティといった通常のホワイトペーパーでは扱われないテーマに関する項目を含め、必須項目が網羅されたテンプレート形式のホワイトペーパーを使用することを義務付けています。
上場廃止の可能性。発行者がMiCAに準拠したトークン・ホワイトペーパーを公開していない場合、取引所は既存のトークンを上場廃止とします。EUの取引所はすでに、上場しているトークン発行者に対し、新しいホワイトペーパー規則の遵守を求める連絡を取り始めています。MiCAのホワイトペーパーの形式および内容に関する新たな要件は2025年12月23日に発効するため、トークン発行者は新要件を満たすよう既存のホワイトペーパーを更新する必要があります。実務上、EUの取引所は12月の期限よりかなり前から新要件の遵守を求めています。
新しいトークンの上場。所定のホワイトペーパーがない限り、EUの暗号資産取引所においてトークンの取引を開始することはできません。ホワイトペーパーの作成義務は、募集を行う者、または取引の許可を求める者に課されます。通常はトークンの発行者が該当しますが、取引の許可を求める者が発行者とは無関係な第三者であるケースも考えられます。
EU域外発行者のための本国規制当局。EU域外の発行者は、すでに上場しているか、上場を予定している場合、単一の規制当局を選択することができます。発行者は、自社の具体的な事実関係や状況、ならびにEU規制当局間の責任分担を定めるMiCAの規定に基づき、どの国が最も適切であるかを慎重に評価することが推奨されます。
正式な規制当局の承認は不要。MiCAのホワイトペーパー・プロセスでは、規制当局による正式な承認は規定されていませんが、規制当局は提出されたホワイトペーパーの審査を行い、必要に応じてフィードバックを提供します。
ホワイトペーパーに関する発行者の責任。ホワイトペーパーに「完全でない、公正でない、または不明確である、もしくは誤解を招く」情報が含まれていた場合、発行者は、トークン保有者が被った損失に対して法的責任を問われる可能性があります。
自動的な発効。ホワイトペーパーは、EU規制当局に提出された20営業日以内に(ただし、規制当局により期間が延長される場合があります)に、提出先の法域(本国)ならびに本国規制当局への申請において通知された他のEU加盟国において効力を生じます。
EUにおけるユーティリティ概念の狭さ。ホワイトペーパーの作成において、発行者はそのトークンがユーティリティ・トークンであるか否かを明記する必要があります。EUにおいては、トークンの「ユーティリティ」とは、「発行者が提供する商品またはサービスへのアクセスを提供することのみを目的とする暗号資産の一種」を意味するにすぎません。特定のトークンを「証券」の分類から区別する一助となるよう、ユーティリティの概念をより広く適用し、それに基づいた規制上の立場をとる米国の発行者にとって、この点はしばしば混乱を招きます。ただし、MiCAに基づく分類が、米国での法的な分析に影響を与えることはありません。
ウェブサイトでの一般公開。トークンの公募や取引の開始前に、ホワイトペーパーは少なくとも本国となるEU加盟国の公用語の1つで作成され、機械読み取り可能かつダウンロード可能な電子XHTML形式にて、発行者のウェブサイト上で一般に公開されていなければなりません。
サステナビリティ
ホワイトペーパーでは、サステナビリティ問題に関連する必須事項の開示が求められます。義務付けられる情報には、エネルギー消費者、エネルギー源およびその算定方法などの開示が含まれます。サステナビリティに関する詳細情報については、本クライアントアラート末尾の附属書をご参照ください。
電子マネー・トークンおよび資産参照トークンに関する追加ライセンス要件
MiCAは、暗号資産を「電子マネー・トークン(EMT)」、「資産参照トークン(ART)」、「その他の暗号資産」の3種類に区別しています。EMTおよびARTは、基本的には法定通貨またはその他の有形資産に裏付けられたステーブルコインの一種です。
EMTおよびARTに関するMiCAの要件は厳格なものです。これらの区分のトークン発行者は、原則として、EU域内に拠点を設け、規制ライセンスを取得する必要があります。「その他の暗号資産」区分に該当する暗号資産に関連する規則の負担は比較的軽く、同区分に該当するトークンの発行者は、発行をカバーするためにEUの規制ライセンスを取得する必要はありません。
記載内容に関する要件
MiCAに準拠したホワイトペーパーは、取得予定者が十分な情報に基づき意思決定できるよう、専門用語を避けた平易な言葉を用い、明確かつ公正で、誤解を招かない情報を含んでいる必要があります。ホワイトペーパーには、少なくとも以下の情報を含めることが求められます。
発行者、プロジェクトおよびその目的に関する詳細な説明
権利および義務を含む、提供される暗号資産の特性
基盤となるテクノロジーとセキュリティ基準
関連するリスク(市場リスク、技術的リスク、法的リスクなど)
ガバナンスおよび調達資金の使途(ある場合)に関する情報
関与する第三者サービスプロバイダーの詳細
サステナビリティに関する必須の開示事項
また、ホワイトペーパーには、当該暗号資産に関して以下の明確な記載を含める必要があります。
価値の一部または全部を失う可能性があること
常に譲渡可能であるとは限らず、流動性がない可能性があること
投資家補償制度や預金者保護制度の対象外であること
公募の対象がユーティリティ・トークンである場合、特に暗号資産プロジェクトが失敗または中止となった際には、当該トークンをホワイトペーパーで約束された商品やサービスと交換できない可能性があること
デジタル資産の発行者は、EU域内に拠点を置くかどうかにかかわらず、ホワイトペーパーの作成および提出に向けて迅速に行動する必要があります。また、自社のトークンがEUの取引所で取引適格となることを目指す新規デジタル資産の発行者も同様に、準備を進め、一般向けトークン・ローンチやその他の取引のタイミングに関する要件を考慮に入れる必要があります。
附属書―MiCAホワイトペーパー サステナビリティ開示に関するFAQ
以下では、MiCAにおけるサステナビリティ開示に関して、よくあるご質問(FAQ)にお答えします。
1. MiCAが義務付けるサステナビリティ関連の開示とはどのようなものですか?
MiCAは、暗号資産の発行者と暗号資産サービスプロバイダーの双方に対し、EUレベルで初となる環境負荷の透明性確保を義務付けています。この義務は、各暗号資産を支える「コンセンサス・メカニズム」による環境フットプリントに焦点を当てています。以下の通り、個別に開示が求められます。
暗号資産の発行者:当該暗号資産のホワイトペーパー内に記載
暗号資産サービスプロバイダー:自社のウェブサイト上で公開
開示内容は、「暗号資産の発行に用いられるコンセンサス・メカニズムが気候に及ぼす主要な悪影響、およびその他の環境関連の悪影響に関する情報」を含める必要があります。これには必須の開示事項と、追加の任意の開示事項の双方が存在します。
2. 必須となる環境指標と、任意となる環境指標はどれですか?
すべてのサステナビリティ開示において必須となる環境指標は、「関連するコンセンサス・メカニズムの年間総電力消費量(kWh)」の1つのみです。ただし、そのエネルギー消費量が年間50万kWhを超える場合には、以下の一連の指標の開示も必須となります。
取引に使用された再生可能エネルギーの割合
エネルギー集約度(1トランザクションあたりに使用される平均エネルギー量)
コンセンサス・メカニズムに起因する温室効果ガス(GHG)排出量(スコープ1-2。データが合理的に入手可能な場合はスコープ3も任意で対象)
GHG集約度(例:1kWhあたりのCO₂換算kg)
これらの情報を作成する際に適用すべき「算定方法」についての詳細は、MiCAに関連する規制技術基準に規定されています。ただし、MiCAは多くの主要指標の計算に関するガイダンスとして、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)も相互参照しています。
さらに対象となる企業は、エネルギーミックス、炭素集約度、電気・電子機器廃棄物の発生量、一般廃棄物の発生量、水使用量などに関連する任意の指標(これに限定されません)についても報告することが可能です。
3. なぜサステナビリティ開示が導入されたのですか?
サステナビリティ開示は、さまざまなコンセンサス・メカニズムが環境に及ぼす潜在的な悪影響への懸念から導入されました。これは、透明性の向上が環境パフォーマンスの改善につながるという期待のもと、情報開示の拡充を推進してきたEUのサステナビリティ問題に対する一般的なアプローチと一致するものです。
4. MiCAにより、環境要因だけでなく、社会やガバナンスの課題を含む、より広範なESG報告義務が課されることになりますか?
いいえ。MiCAにおける非財務情報の開示は、コンセンサス・メカニズムの環境への影響に限定されています。社会やガバナンスに関する強制的な開示義務はありません。
5. 開示情報は更新する必要がありますか?
開示情報は少なくとも年に1回更新するか、あるいは重大な変更(コンセンサス・メカニズムの切り替えやエネルギー使用量の大幅な変動など)が生じた場合には、不当に遅滞することなく更新する必要があります。
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